中小企業診断士

中小企業のコンサルタントになるなら、ファームに行かずに何をするか?

昨日の記事では、中小企業のコンサルタントを目指すなら、コンサルティングファームに行く必要はないことを伝えました。今回は、前回の振り返りをしつつ、何をすれば良いのかをお伝えします。

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大企業と中小企業は、全く異なる生き物

大企業と中小企業は、同じ法人・同じ株式会社ではありますが、全く異なるものだと考えた方が良いです。

同じ国でも、アメリカと中国は全く異なります。日本とミャンマーも全く異なります。
同様に、どちらが良い・悪いではなく、組織体・生命体として全く異なることを、まずは認識する必要があります。

意思決定プロセスの違い

具体的には、意思決定プロセスが全く異なります

大企業は取締役会や経営者ミーティングなどを経て物事が決まります。
コンサルティングをする上では、この場で提案を通せるような論理を構築することが必要です。

一方で中小企業の意思決定は、極論言えば社長が納得した瞬間に決まります。
社長個人が会社のオーナーであり、同時に経営のトップなので、全権限を掌握しているからです。

大企業で1年かけて決まるようなことが、中小企業では3分で決まることもあります(もちろん規模感は全く異なります)。社長が論理だけでなく、感覚的に「それやりたい」「やっておいた方が良さそう」と思ったことも含めて、即決されるのです。コンサルをする上では、社長の意思決定を促す(論理的にも感情的にも)ことが必要です。

組織文化の醸成され方・時間の違い

その結果、組織文化につくられ方も全く異なります。

中小企業の場合は、良くも悪くも、社長のキャラがそのまま組織文化に反映されがちです。したがって社長が変わると組織文化がダイレクトに変わります。ブラックだった企業があっと言う前に人に優しい企業に生まれ変わったりするのです。その変化の速さは大企業では味わえません。

大企業の組織文化を変えようと思ったら数年単位での取り組みが必要になります。稲盛和夫さんレベルの経営者が関わっても、JALを変えるのに2年以上必要だったのです。幹部の意識を半年程度で変えたことは、月間『致知』2018年8月号特集に書かれていますが、3万人を超える従業員全体まで、その意識が浸透するには、やはり時間が必要になるのです。

大企業の小さい版≠中小企業

大企業に属している人が、中小企業のことを「大企業の人数や資本金が少ない版」だと考えているケースを見ることがありますが、それは誤解です。今まで見てきたように、大小の違いではなく、種類そのものが異なるのです。

もう1つ補足しておくと、法的には同じ「中小企業」であっても、スタートアップとスモールビジネスは全く異なります。詳細は省きますが、このブログでは全体を通じて「中小企業=スモールビジネス」として書いています。

長くなりましたが、このように大企業と中小企業は「全く異なる生き物」だということを、まずは認識する必要があります。この違いを知ることで、中小企業のコンサルタントになるためにやるべきことが見えてきます。以下、見ていきましょう。

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中小企業に触れる機会を増やす

独立して中小企業のコンサルタントになるためには、中小企業に直接触れる機会を増やす必要があります。顧客に対する洞察(インサイト)なくしてビジネスができないのは、業種・業態に関わらない原理原則です。

現在、大企業に属している人の場合、中小企業の文化を知らないことが多いです。それはコンサルティングファームに勤めた場合も同様です。(大手ファームの顧客は、大企業が中心です)

また中小企業で働いていたとしても、社長と会話ができない場合は、そのような機会を増やす必要があります。社長と会うためには、以下のような方法があるでしょう。

  1. 中小企業に転職する
    (社長の右腕のようなポジションがあると最高です。希少でしょうが・・)
  2. 中小企業診断士の実務補習/実務従事などを活用する
    (継続性のためには、お金が掛からないと良いのですが)
  3. 中小企業の経営者が集まるセミナーや会合等に参加する
    (懇親会もついているものの方が、社長と直接会話する機会を持てます)
  4. 副業の対象を中小企業にする

私は会社員時代に、1つ目以外は全部やりました。1つ目は探しましたが見つかりませんでしたので2~4つ目で経験を積んで、独立したのです。

とにかく中小の経営者が集まるところを探して、足を運びましょう。

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営業・マーケティングを経験する

中小企業診断士の取得者を見ていると、営業・マーケティングの経験者はかなり少ないです。実際、「販売・マーケティング」を得意分野とする人は、全体の16.1%しかいません。(データで見る中小企業診断士 2016年版より)

営業やマーケティングが苦手なままだと、大きく2つの問題があります。

1つ目は、中小企業の悩みを受け止められないことです。
中小企業経営者の悩みは、常に販売です。この10年くらいの中小企業白書を見ていると、常に販売に関する悩みが圧倒的な1位を占め続けています。

この真剣な悩みに対して机上の空論しか渡せないようでは、信頼関係を構築することが難しくなってしまいます。

2つ目は、フリーランスとしての自分の事業に対する営業・マーケティングができないことです。会社員を辞めて基本給がなくなってしまう前に、営業・マーケティングを経験し、少しでも仕事を獲得する仕組みを構築しておく方が良いでしょう。

ちなみに前回の記事でお伝えした通り、ファームでは仕事を獲得してくるのは上のポジションの人です。仮に転職して入社しても、マーケティングや営業を経験する機会は少ないと考えた方が良いでしょう。

何の看板もない、個人としてセミナーを企画して、お客様を集めてみて下さい。たった数人集めるのに、どれだけ苦労するかが分かります。必ずしもブランドやネームバリューがない中小企業を支援するときに、このリアルな苦労が役立ちます。

商品・サービスをつくる

フリーランスとして独立する以上、商品・サービスが必要です。
冷静に考えると不思議なのですが、自分の商品・サービスを掲げないまま「売れないんです」と相談してくる士業が後を絶ちません。売り物がなければ、売れるはずがありません。

中小企業の社長とお会いして、彼らの悩みや課題を発見したならば、それを解決するための商品・サービスをつくりましょう。

すぐに売れなくても良いのです。
それ以上に商品・サービスをつくるときに悩む経験が糧になります。特に値付けについては悩むでしょう。この経験も社長と話すときに役立ちます。

少しずつ売れるようになれば、顧客から声をもらって、改善することもできます。
独立する時点では看板商品が1つでもあると、安心材料になるでしょう。

最後に補足ですが、大企業(組織)での意思決定を促すファームと異なり、中小企業経営者(個人)の意思決定を促すには「論理」よりも「傾聴」の方が重要です。もし学びの場に行きたい場合は、論理よりも人間と向き合う場の方をお勧めします。

ここに書いたことに積極的に取り組む方が、ファームで経験を積むよりも、中小のコンサルタントになるには近道です。大企業を顧客にするファームとは、求められることが全く異なることを、改めて認識いただけたらと思います。

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【編集後記】
オリンピックのチケット、申し込んでみました。
普段、馴染みのないスポーツを優先したので楽しみです。
妻と併せて、それなりの数を申し込んだので、どれか当たると良いのですが。

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