平成26年度:企業経営理論 設問9
研究開発に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア) 基礎研究から生み出された技術が成功するためには、その技術に基づく製品が市場で勝ち抜くことを阻む「死の谷」と呼ばれる断絶を克服しなければならない。
イ) 自社の技術だけで最終製品が生まれることはまれであり、関連する技術領域を幅広く動員する技術の統合能力が製品開発には必要である。
ウ) 市場ニーズをくみ上げて技術開発を進めるには、研究開発要員が日常的に市場との対話の機会を持ったり、営業部門や生産部門との連携を保つことが重要である。
エ) 新規な技術が生まれにくくなるにつれて、顧客の感性に訴えるデザインや利便性あるいは顧客の課題解決提案などの新たな視点による製品開発の例も生まれている。
)オ 模倣は、研究開発投資のコストや時間を節約できるばかりでなく、先発企業の市場開拓に追随すればよいので、マーケティング・コストの負担も軽減できる可能性が高い。
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研究開発から事業化まで
技術を基にした製品をつくり、事業化するまでには、乗り越えなければならない障壁があります。
なお、いきなり余談になるかもしれませんが、製品をつくるためには、必ずしも技術を基にする必要はありません。
私がコンサルティングするときには、対象となるお客様や、そのお客様が困っていることから、製品づくりに入ることの方が多いです。技術から入ると、顧客を無視した自分勝手な製品が生まれてしまうことが多いからです。
さて、本題に戻りまして、事業化までには3つの障壁があります。
「魔の川」とは、基礎研究から応用研究までの間の障壁です。
技術シーズを市場ニーズに結び付け、具体的なターゲット製品を構想しなければなりません。
「死の谷」は、「デスバレー」とも言われます。
応用研究から製品化(パイロットライン)までの間の障壁です。
製品を製造・販売して売上にするためには、資金や人材などの経営資源を適切に調達することが必要とされます。
「ダーウィンの海」は、製品化(パイロットライン)から、事業化までの間の障壁です。
事業化を成功させるためには、競争優位性を構築することが必要とされています。
なお、これら3つを総称して「デスバレー」と呼ばれることもあるようです。
事業化までを「プロセス」と思わない方が良い
なお私は、製品をつくり事業化するまでを「プロセス」と思わない方が良いと思っています。
プロセスは1→2→3・・のように順序立って流れていくもの。
基礎研究→応用研究→製品化→・・のように100%流れていく、と勘違いしていまうのです。
商品開発の現場を見ると、顧客のニーズを満たすために、外から技術を買ってくることもあります。
この場合は、先に製品のイメージがあり、不足している技術を探しているので、上記プロセスとは別の流れになります。
製品を企画・開発し、事業化するまでには「足らないピースを埋め続けるパズル」だと思った方が、現場の感覚に近いです。
そして、そのピースには「外れ」も入っています。
一度定義した「顧客像」が間違っていた、なんてことは良くあることです。
外れピースを正解ピースに置き換えて、また他のピースを当てはめていくのです。
特に世の中が「リーン・スタートアップ」や「アジャイル」の流れに乗っていますので、この傾向はますます強くなるものと思われます。
ガートナーのハイプ・サイクル
なお、調査会社であるガートナーはIT技術を中心とした技術に関して「ハイプ・サイクル」というものを毎年発表しています。
2018年版はこちらです。
ITのトレンドを把握するには、必見の資料と言えるでしょう。
このハイプ・サイクルは、
- 黎明期(技術の引き金、Technology Trigger)
- 流行期(過剰期待の頂、Peak of Inflated Expectations)
- 幻滅期(幻滅のくぼ地、Trough of Disillusionment)
- 回復期(啓蒙の坂、Slope of Enlightenment)
- 安定期(生産性の台地、Plateau of Productivity)
という5つのステージから成り立っています。
どんな技術も時間と共に比例して浸透していくわけではありません。
過剰に期待される時期や、幻滅される時期などを経て、世の中に浸透していくのです。
例えば2018年版では、「ディープラーニング」は、2の過剰期待の時期に差し掛かっています。
一般に広まるまでには、まだそれなりの時間がかかるということです。
このハイプ・サイクルも、その裏にある理論は「死の谷(デスバレー)」ではないか、と考えています。
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解答
ア
アで書かれていることは、「死の谷」ではなく「ダーウィンの海」のことですね。
関連問題
平成27年:設問8
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