一番練習を積んできたバイクで、思ったように成果が出せなかった。
そんな簡単に五島のコースは成長を感じさせてくれない。
落胆と、それでもランまでたどり着いた安堵が混ざった複雑な気持ちで、トランジションに入る。
スポーツドリンクを飲みつつ、まずはトイレへ。
このレース中は、ずっと腹痛に悩まされた。
トランジションエリアの外濠公園は、和式トイレのみ。
バイクで脚を使い切っていると、しゃがむことすらツラいのだが、
思いの外、脚は大丈夫だった。
「あれ?まだ脚、残っているかも」
更衣室に入り、さっさと着替える。
と言っても、靴下とシューズを変えて、キャップをかぶり、
ウエストポーチをつけるだけ。
ランの作戦
更衣室を出て、すぐに走り始める。
うん、トボトボだけど、ちゃんと走れる。
去年は膝を壊してしまい、ラン前半は、歩くしかなかった。
今年は、決して速くはないけど、走れている。
ランスタートラインを越えたのは、ちょうど16時だった。
ここを15時半には突破したかった。
それがバイク7時間切りの目安だったから。
ただ、後ろを向いても仕方ない。
レース全体で見れば、まだチャンスがある。
今まで切ったことのない、14時間の壁。
そして、ラン5時間の壁。
21時までにゴールしよう。
2つの壁を、今回で超える。
ランを5時間で終えるなら、キロ7分を切るくらいのつもりで。
常にキロ6分台に入っていれば、まぁ、大丈夫。
途中にトイレに寄ることも考えると、6分40秒くらいでは進みたいところ。
バラモンのランコースは、片道10.5kmを2往復するコース。
大まかに考えて、10.5km 4回を、それぞれ1時間15分で走ることを目標にした。
ということは、最初の折り返しを17時15分には出る。
トイレに寄ることも考えて、17時5分~10分には着いておきたい。
スイムやバイクのように、「押さえて」とか、言っているペースではない。
ロングのランでキロ6分台で走るのは、私にとっては決して簡単なことじゃない。
とりあえず、エイド以外はちゃんと走ろう。
エイド以外は、上り坂でも歩かない。
あと、エネルギー切れを起こさないように、5km毎にジェルを取る。
ランで感じたバイクの成長
走り出してみると、当然カラダは重いのだが、脚が終わっているほどではない。
やはり例年に比べると、脚は残っている。
ランコースは、ほぼ頭に入っている。
とりあえず、次のエイドまで、しっかり走ろう。
エイドで氷水を頭からかぶる。
顔も水で洗って気分をサッパリさせた。
シューズには水が掛からないように注意しつつ。
エイド直後の右折場所で、知り合いの方が、ジップロックに入った氷をくれた。
「ポセイ丼、頑張れ!」という激励の言葉と共に。
これが助かった。
午後4時過ぎ、まだ太陽の陽射しが強くて、気を抜くとやられてしまいそうだった。
頂いた氷を帽子の中に入れて、頭を直接冷やす。
頭は血管が多く通っているところなので、頭を冷やすと、全身を巡る血液が冷えて、カラダも冷やせる。
これで少しパフォーマンスが戻ったように感じた。
以下、1kmごとのラップタイム。
1 7:05
2 6:02
3 6:28
4 6:07
5 7:49
うん、まぁまぁ良いペース。
ジワジワと周りの選手も抜いている。
エイドも長居せず、水を頭からかぶって、スポーツドリンクを飲んだら、すぐに出る。
たまにバナナを食べる。
5kmを過ぎた後、エイドの手前でジェルを飲む。
8kmを過ぎた頃、仙人とすれ違った。
バイクの差を考えれば、4~5kmしか差がないのは、おかしい。
5kmを過ぎた頃から、仙人が来ないと感じて、探していたのだ。
予想通り、何やら調子が悪そう。
「ランで大ブレーキっす」
「マジっすか?頑張りましょう!」
声を交わし、ハイタッチで交差する。
6 6:46
7 6:37
8 6:28
9 6:41
10 6:12
折り返し地点に到着。
17時7~8分頃だったろうか。
予定通り、トイレに寄る。
(腹痛は、まだ治っていなかった)
あいにく先に使っている人がいて、しばらく待たされる。
用を足して出ると、ちょうど目標にしていた17時15分だった。
「うん、行ける!」
お腹の調子も少しずつ良くなっていて、
エイドではバナナ以外も食べれるようになっていた。
脚は間違いなく残っている。
おそらく、過去3年と比べても、一番残っている。
バイクのスピードは上がらなかったけれど、
ランに脚を残す乗り方はできていたのかもしれない。
トレーニングは、無駄じゃなかった。
折り返してからも、1人2人と前の人を抜いていく。
11 12:26(トイレ)
12 6:11
13 6:34
14 6:24
15 7:36
トラブル発生、そしてゾンビ化・・
調子に乗って、そのまま前へ。
ランで5時間を切る。
それどころか、もう少し早いペースで行けるのでは?
2周目は、日も落ちて温度も下がるから、もっと走りやすくなるはずだ。
何なら、4時間半切りも狙えるかも。
そんなことを考えていた矢先、トラブルが起きた。
15km地点、一番きつい上り坂の手間にあるエイド。
ここでジェルを取り、果物もいくつか食べた。
旨すぎて、「いや~、レースのこと忘れますね~」などとエイドの方と歓談。
エイドを出て、厳しい上り。
さすがにここは走れないか。
周りの選手に合わせて、自分も歩く。
てっぺんまで上り終えて、走りだそうとしたところ、カラダが動かない。
本来なら、大好きな下り坂。
加速して周りの選手を抜くはずのところ。
「あれ・・!?」
そうこうするうちに、胸がムカムカしてくるのを感じた。
内臓が回復してないのに、色んなものを食べ過ぎたか?
あるいは、日が落ち始めているとは言え、気づかぬうちに陽射しにやられていたのか?
原因はさておき、気持ち悪くてカラダが動かない。
ロングのランは、普通のフルマラソン以上にトラブルが起きる。
そんな当たり前のことを忘れて、調子に乗っていた。
下を向いてトボトボ歩くしかできない。
完全にゾンビ化したような状態になった。
ちょうどそのとき、応援場所を変えた元帥が現れた。
「さっきまで調子良かったんですけど・・」
情けない姿しか見せられず、せっかく応援に来て下さったのに、申し訳ない。。
(元帥の応援に空元気でしか応えられない・・元帥撮影)
「AKBもさっきランスタートしたよ」
えっ!?既に18時が迫っていた。
バイク100km地点までは順調に進んでいたのに、何か遭ったに違いない。
残り4時間で42.2kmは、あまりにつらい。
けれど、行けるところまで頑張って欲しい。
16 8:33
17 10:54
18 11:38
19 11:13
20 7:21
21 8:07
しっかり歩けば、本来、キロ9分は切れるはずが、
歩くことすら、まともにできていなかった。
またしても急にゴールが遠のいていく。
夜9時までのゴール。
初の14時間切り、ランの5時間切りが消えていく・・
仲間たちの苦戦
仙人とすれ違った。
走りを見る限り、まだ復活していない様子。
「AKB、バイクで落車して、さっきリタイアしたらしい・・」
落車!?・・怪我がなければ良いのだけど。
レース後、話を聞いてみると、ずいぶん激しく落車した様子。
大事には至らなかったものの、後日、肩を脱臼していたことが分かった。
今年こそ、ポセイ丼全員でゴールできると思っていたのだが・・
残念でならない。
彼の分も、しっかり走らなければ。
(全くカラダが動かないけれども・・)
次の折り返し地点が近づいてくると、
トライアスロンブログで有名な「るみおかん」さんが前をトボトボと走っていた。
明らかに走りに力がない。
ここでハルさんと会話しているときに、隣で力なく歩いているのが私。。
本当だったら、ちゃんと挨拶をして、
いつもブログを参考にさせて頂いていることのお礼を言いたかった。
ただ、おかんさんもそんな状況っぽくなかったし、
自分が既にゾンビ化していて、声を出すのも大変だった。
ゾンビからの復活
折り返し地点を超え、2周目に入る。
この時点で、ラン出発から2時間40分が経過していた。
この10.5kmで、1時間25分も掛かってしまったということ。
スペシャルエイドに置いておいた、後半戦用のジェルを手にする。
しかし、胃がこれらを受け付けてくれるかは、もう分からない。
22 10:20
23 8:19
24 10:37
25 10:39
途中でたまにトボトボ走るも、1kmも続かないまま、ゾンビに戻る。
「ダメだ、何とかしないと!」
このままゴールまでゾンビで進んでも、何も得るものがない。
こういうときにどうすれば復活できるのか?あの手この手を繰り出そう。
実はゾンビ化した直後、胃薬を取り出そうとしたら、ポーチに入っていなかった。
あれだけ荷造りのときに確認したのに・・
間違いなく入れていたので、どこかでジェルを取り出したときに、落としていたのかもしれない。
ゾンビ化してからジェルを取っていなかったので、ジェルを取った。
そして24~25km地点のエイドで、再びトイレに寄った。
日が落ち始めて、やや涼しくなり始めていたが、ここでもう一度、頭から氷水をかぶる。
ここで目が覚めた。
ジェルが効いたのかもしれない。
とすると、エネルギー切れだったのか?
カラダに力が戻ってくるのを感じて、再度、走り始める。
26 6:54
27 6:33
28 7:18
29 6:31
30 6:57
31 7:35
32 6:48
周りが暗くなってきた。
最後の折り返し地点、堂崎駐車場で再度、トイレに寄る。
今回も使っている人がいて、待たされる。
私の次に来た人が、待つのを嫌がったのか、堂々と女子トイレに入っていった。
いや、それはないでしょう。
レース中だろうが何だろうが、私はルールは破りたくない。
先に女子トイレから出ていった人、あとで絶対に抜いてやる。
(暗くなってしまったので、結局、抜いたかは分からないのだけど)
感謝いっぱいのラストラン
例年だと、日が落ちた後は寒くなって、アームカバーを着けなおしていた。
しかし、今はそれなりのペースで走っているので、寒さは感じなかった。
一部、上りは歩くけれども、それ以外はキッチリ走る。
暗闇の先に選手を見つけては目標として、次々と選手を抜いていった。
33 10:03(トイレ休憩)
34 7:57
35 7:14
36 6:25
37 7:11
最後の一番つらい上りを超えた。
1周目はここでゾンビ化したが、今は大丈夫。
ここから先の下りで、視界に入っていた4~5人を一気にパスする。
38 5:54
39 6:30
40 6:23
立ち寄ったエイドや、応援し続けて下さった方々に
「1日、ありがとうございました!」
としっかり挨拶をする。
本当に、こんなに素敵な大会を運営して下さるスタッフの方々、
そして朝から晩まで応援して下さる島の方々、
毎年のことながら、感謝しかない。
残り4km地点で、仙人の背中が見えた。
ちょうどライトの下に居たので、ポセイ丼のウェアが目立ったのだ。
歩いていて、やはり辛そうだった。
「仙人、最後まで!」
ゴールでの再会を誓って、私はそのままのペースで進んだ。
最後のエイドで、もう1度、顔を洗う。
タイムを見ると、ギリギリ自己ベスト(14時間14分)に届きそうにない。
カラダの力は戻ったとは言え、もう余力はない。
必死にペースを上げるも、もうこれ以上、上がらない。
ゴール地点から、歓声が聞こえてくる。
沿道の方々から、「あと少し!」と熱い声援をいただく。
上げろ!最後まで。
41 6:07
42 6:27
ゴール地点の手前、最後の交差点に元帥とAKBの姿があった。
応援してくれる仲間がいるのは、本当にありがたい。
(元帥撮影)
五島港公園に入り、4回目のレッドカーペット。
照明が自分を照らす。
今回のレースもつらく、長かった。
思った通りの結果は出なかった。悔しかった。
でも、完走した自分を、少しは褒めてもいい。
そう感じるような、温かいゴールの雰囲気。
ゴール前で手を出す観客に応えつつ、
複雑な気持ちを抱いたまま、ゴールテープを手にした。
14時間15分42秒のレースが終わった。
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【編集後記】
思い出すと、やはり悔しさが強くなってきますね・・
今日も素晴らしい1日になります。感謝!!
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